2008年3月20日の早朝、Queen Elizabeth 2 が大阪港に最後の寄港をした。世界一周航海の途上、香港からホノルルへ向かう途中だ。QE2はこの航海ののち、最後の航海をおこないその最終目的地は中東ドバイである。QE2はこの地でホテル・シップとなって余生を送ることになる。

大阪港への入港	桟橋への接近

とつぜん、探していたところからずっと左にあたって、ひとつの影が、日の出を示すわずかな明るさの中に浮かび上がった。細長い、たけの高いかたまり、それは乳色をした空気の中で、みるみる形をとり、大きくなり、ついにひとつの船となった。予定の午前6時、港入り口の赤青の灯台の間に姿を現す。小雨煙る中に浮かぶ船影は絵画のようでもあり、マルタン・デュ・ガールの「チボー家の人々」に描かれた霧の中のル・アーブル港を彷彿とさせる。

やがて桟橋間近まで近づいてくるが結構、速度を保ったままだ。洗練された流線型で優美な姿はまるでクルーザーであり69,000万トンなどという大きさはまるで感じられない。

接岸	キャビン

6時30分接岸、接岸時になってはじめてその巨大さに圧倒される。突然10階建ての大きなビルが出現したようなものだから。岸壁にはすでにヤサカ交通のバスが15台前後待機している。QE2の乗降は空港とおなじ形のボーディングブリッジでおこなう。4階くらいの高さにある。でも1つしかないのでとても時間がかかりそうだ。このボーディングブリッジの上には

WELCOME HOME CUNARD QUEEN ELIZABETH 2 WORLD CRUISE 2008

という大きなボードが舷側に掲げられた。しかしボーディングブリッジには屋根があるので乗船者からは見えない。QE2は今夜にはホノルルに向けて出帆してしまう。つかの間の寄港だ。

イギリス商船旗レッド・エンサイン	船橋

船籍はSouthernPutonとなっている。船体上部は純白に塗られたままであり長い航海の形跡は見られない。船橋の下側中央にCUNARD社のマークが掲げられている。

1969年就航、船籍SouthernPuton、全長294m、全幅32m、キール(船底)から煙突までの高さ62m、海面から煙突までの高さ52m、海面から最上部デッキまでの高さ推定30m。レインボーブリッジ(海面上50m)の下を通過して東京港には入れないが2007年にベイブリッジ(海面上55m)の下を通過して横浜港に入ったことがある。

http://www.cunard.com/
2010年より後継のQueen Elizabeth３ が就航し、既に何度も日本に寄港している。